弟子はビデオカメラ
新聞記事の一コーナー。そこには、
新潟県中城町 日立産機システム社の
現在の取り組みが 書かれていました。
技能工歴30年、金属の表面加工や組み立てで
総理大臣賞も受けた腕前をもった
社員がビデオカメラの前に立った。
ヤスリを持つ手を小刻みに滑らすと、
数千分の1ミリの凹凸は
鏡のように平らに仕上がっていく。
「匠の技」の実演をカメラが追う。
撮影は「技術を次代に残したい」という日立の計画の一環。
手取り足取りで伝承してきた技を、
たかが動画で伝わるか を考える余地はない。
新人配属が8年間ゼロ。伝えたくても相手がいない。
技術が消える恐怖より、どんな形であれ残るほうが・・・
という思いが、カメラという弟子に思いを託す。
(日経新聞2004.5.27朝刊より)
衝撃が走りました。
新人が入らない中での技術継承はどうしているのか、 ずーと 気になっていたからです。大手では、こういう取り組みが実践されていて
うれしく思いました。うちに仕事くれればよりうれしいけど。(^_^;)
今の思い..
長い間、まじめに生きてきたら、その人にしかない、なんらかの特技・こだわりは あると思います。そういう結集が、新しいものを生んでいく力になると思ってます。
なのに、最近は・・・オソロシイ状態です。
2年前に、目の当たりにしてびっくりした お話をします。
「まだこの業界やってる??」
こういう電話から始まる業界って知っていますか?
これは何を隠そう、映像業界なのです。
昔は企業のビデオ製作会社はたくさんあったのですが、
最近、バタバタと潰れていっているんです。
淘汰があるのは理解できます。しかし、その道一筋 何十年も専門にやっていたところ(たとえば照明技術だけの会社があるのをご存知ですか?)がつぶれて、あくる日から別の仕事を探さなければならなくなる っていうのは
何か日本の大きな財産の損失に思えて仕方ありません。しかも、映像や音声など、コンテンツビジネス真っ盛り時代が訪れる前にです。きっと皆様の業種にも同様のことがあると思います。私はこっちしか知らないので・・・(^_^;)
理由はいくつかあると思ってます。
・PC機器高度化や、雑誌、TVがこぞって
映像製作は簡単です って間口が広がっている。
→動画のニーズが増えるのはものすごくうれしいのですが、
安易に始めて、破格値で業界を乱したあげく、無理がたたり
結局辞めていく人が多いみたいです。
・2Dでは儲からなくなったWeb製作会社や、個人が動画に走るパターン
→悪くないのですが、基本を知らず自己満足&テクニックのみに走り、
結果、映像はダメと思われてしまうのが恐ろしい。しかも動画は奥が
深いんです。 (エンコードや、NTSCとRGBの違いによる不具合など)
・広告代理店とかが、映像製作では儲からなくなって、
仲介やーめた というパターン
→最近ようやく、広告効果を計量する仕組みを
出してきているようです。
さらに私は、インフラを持ったところが大半の予算を持っていく。残った予算を製作現場に渡す という仕組みにも不満があります。(不満ばかりですいません。)
なぜなら、中身が大事だと言われているわりには、コンテンツ制作業者は、最後に決まるからです。たとえばe-learning(eラーニング)ビジネスが良い例でしょう。配信管理、認証管理や、講座管理や受講履歴というシステムを持ったところが、コンテンツ制作一式で受注。コンテンツ製作費用がわからない業者が、値引きまでやって受注してしまいます。こうなると、しわよせは、コンテンツ製作者側です。
で入札形式などで安い業者を見つけた後は 運営をどこかに任せて はい 終わり という流れが完全に出来ています。これではいいものは出来ないと思います。前職でインフラ側の立場でしたし、どっちが悪!ということではないのですが、せめて、予算決めの際に、コンテンツ業者を混ぜるべき だと強く思います。特にこういった流れはお国仕事に多いと実感しています。
こういう影響を受けて、クリエイティブ性のある仕事の方が、値段が安く、結果、文化的なものがどんどんが死んでいってる ということが問題だと思っています。
1分の映像作ったらいくら? というのは、ちょっと無理があるよーな 気がしませんか?(^_^;)
これは中小企業の技術にも当てはまっているんじゃないかと想像されます。大企業の下請けをやっていて、パワハラ(パワーハラスメント)を受け、年々単価が下がっている状態。新人を雇う体力や社会保険を払う体力がなくて、技術継承が進まず、倒れてしまう という状態。
これは中国の台頭も大きく影響していると思います。全世界規模の市場競争激化の波がやってきて、この日本でも例外なく価格破壊に巻き込まれています。そのせいで質より量の合理化のみが推し進められ、お金を持つものが強い傾向がどんどん高まっています。製造業・流通業の力関係の逆転もその傾向を物語っています。
製造業が威張る必要はありませんが、お金を持っているというだけの、何もやらない人たちが、大手を振るというのは、やばいんじゃないかなぁと 思うのです。そういう意味では、肉・魚など海外食材に頼っている お金を持つだけの日本が、輸入元を選んでいる というのもいつか、痛いしっぺ返しがくるんでは? と思うときもあります。
話を戻すと、
技術所有の有無は関係なく、立場(資本)が弱いところから、つぶれていっているということです。株にしても、この会社に投資してやろうというよりは、単純に儲けたろう という心理の方が強いような感じがしています。
大企業や銀行、官僚、政治家の多くは、
なりふりかまわず(例外を除く)、下請け等 弱いところから
仕事や技術を奪っていきます。
そのせいか、学生はますます安定志向になり、
中小企業 とくに製造業へは入りたがらず、
従業員平均年齢がどんどん高くなっています。
さらに、かつて日本を支えた高年齢の方が邪魔者扱いを受けている現状。これでは
技術継承ができないのではないかと。
身近なテレビ番組を見てもそうです。
過剰な解説(テロップ、ナレーション、早い展開)により、
解りやすい反面、人間は考える力をどんどん
奪われていっているような 気がします。
最近はそうではないそうですが、
CDが爆発ヒットする理由も、
銀行が変われないのも全て、
横並び精神の表れだと思います。
国に近い放送局ですら
製作会社から著作権という 権利が
ないがしろにされている状態と聞きます。
これは、あらゆる意味で
貴重な職人の技や経験が
なくなっていく危機 に思えます。
このままでは文化の継承・存続が危うくなり、
数千年に渡り人間が築いてきたものが、
全てなくなるような気がしています。
じゃぁどうすれば良いか。
中小企業で、技術を持ったところは
情報発信をどんどんすべきなんです。
Webで情報公開するのに、ほとんど費用はいりません。
検索エンジンも例外なく、裕福さに関係なく
定期的な情報収集をしてくれます。
(最近はちと微妙ですが)
自社にしか出来ない得意技術があれば、
トップになって問い合わせがくるのです。
で、もうかって 宣伝費用にゆとりが出来たら、
うちにもおこぼれをいただければうれしい限りです。(^_^;)